ドーム

アレクサンドロヴォ墳墓には全長約15メートルの通路があります。ファサードが崩れた入り口は東を向いています。通路からは四角い空間へ入れ、天井は台形の形をしています。通路と四角い空間の間に、それもまた四角い通路があります。そこから丸い部屋へ入れる扉があります。部屋の直径は床3.3メートルで、高さは3.4メートルです。

丸い部屋に描かれた6本の縞状の壁画は、その優美な写実性に驚かされます。その1本の中に、この墳墓で最も感動的な発見が待っていました。赤を基調とした単色の縞には尖った物で若い男の左横顔が刻まれています。肖像の上に、コジマセス・フレストスと解読されたギリシャ文字があります。専門家によると、前者はトラキア系の個人名で、後者は、「器用」「達者」などの意味があります。つまり、この落書きは「コジマセス名人」という意味で、男の横顔は墳墓の壁画を手がけた画家の自画像と解釈されています。赤い装飾帯の上には、連なる白黒の卍が描かれています。赤の帯の上には、白黒の繋がった卍から成る幾何学模様の装飾帯があります。下にはイオニア風のキーマ線があり、上には幅の狭い赤い点の入った白い帯があります。

その真上には、保存状態のよい王の狩猟が描かれた1枚が残っています。狩猟はトラキアの絵画で最も多く取り上げられるテーマの一つです。多くの遺跡、装飾品、容器、奉納額などで見ることができます。混沌の象徴であるイノシシを倒すことによって、天地の秩序を取り戻すことができるとトラキア人は信じていました。